作品が売れたら、次は作家への精算です。
ここまでは「同じ情報を何度も入力するのが面倒」という、わりと平和な理由でシステムをつないできました。でも、作家への精算となると少し話が変わります。振込をする以上、銀行口座などの個人情報を扱わなければなりません。
そこで今回、この仕組みをつくるにあたって最初に決めていたことがあります。
「aLのWebサイトには、銀行口座を絶対に保存しない」
作品名やサイズ、作品画像などはWordPressで管理すればいい。でも、銀行口座まで同じデータベースに入れるのは違うだろうと考えました。
もちろん、自分たちで専用のサーバーを用意して、暗号化したうえで管理する方法もあります。ただ、aLを運営する会社はWebやシステムの仕事を長くやっているとはいえ、金融情報を保管するためのセキュリティ基盤そのものを専門に提供している会社ではありません。
それなら、自分たちで何でも持とうとしない方がいい。
そこで思いついたのが、すでに利用しているマネーフォワード クラウド債務支払でした。取引先や振込先口座を管理する仕組みがあるのなら、口座情報はそちらに任せて、aLのWebサイトには持たせなければいい。
調べてみるとAPIも用意されています。
また、つなげそうです。
保存する場所を変えたら、入口も変えたくなった
口座情報の保存先を分ければ、それで終わりというわけでもありません。作家から見ればaLのWebサイトで入力しているように見える以上、その入口についても考える必要があります。
これまでは振込先などをメールで送っていただくこともありました。でも今回あらためて仕組みをつくっていると、「そもそも銀行口座を普通のメールで送ってもらう運用のままでいいのだろうか?」という疑問も出てきました。
今まで当たり前にやってきたことでも、システムをつくり直すのであれば、一度疑ってみた方がいい。
そこで口座情報を入力するための専用の仕組みを用意し、メールに認証番号を送って、一定時間内に認証できた場合だけ入力画面へ進めるようにしました。メールアドレスの変更も同じ環境の中で行うようにし、aL側で保持するメールアドレス自体も平文ではなく暗号化して保存します。
多少の手間は増えます。でも個人情報については、便利さだけを優先するよりも、少しくらい面倒でも安全性を優先する。そのくらいでいいと考えました。
そしてマネーフォワードとの連携も完成。口座情報を通常のWebサイトに持たず、認証された環境から登録できるところまでできました。
なかなかいいんじゃないか。
そう思って、実際に自分でテストしてみます。
完成したけど、面倒だった
最初につくった画面では、銀行コードと支店コードを入力してもらうようにしていました。システムとしては必要な情報が入るので、これで成立しています。
ところが自分で入力してみると、まず銀行コードを調べなければならない。次に支店コードを調べる。そして入力したあとに画面に表示されるのは番号なので、「これ、本当に自分の銀行と支店で合っているんだっけ?」となります。
安全性についていろいろ考えて、APIまで使って、ようやく完成したシステムです。
でも、使ってみたら面倒でした。
システムは面倒なことを減らすためにつくるものだと、その2で散々書いています。それなのに、自分でつくったシステムを自分で使ってみたら面倒だった。
これはダメです。
そして、またAPI
銀行名から銀行コード、支店名から支店コードを取得できる仕組みはないのか。調べてみると、BankcodeJPという銀行・支店情報を提供しているサービスを見つけました。
ありがたいことに、APIも提供されています。
またAPIか。
と思いつつ、ここまで来たらつなぎます。
銀行名や支店名を入力すると候補が表示され、そこから選択すれば必要なコードも自動的に入るようにしました。これなら作家自身が銀行コードや支店コードを調べる必要もありませんし、銀行名と支店名が表示されるので、番号だけを見て「これ合ってる?」となることも減らせます。
安全性を高めるためにつくった仕組みだからといって、操作が面倒でいいわけではない。安全にすることと、できるだけ使いやすくすること。その両方を考えて、ようやくaLと関わっている作家に使ってもらえるところまで来ました。
作家に精算したかっただけなんだけど
振り返ってみると、最初にやりたかったことは非常に単純です。
作品が売れたら、作家に精算する。
その業務をシステム化しようとしただけなのですが、銀行口座をどこに保存するのかを考え、マネーフォワードとAPIで連携し、専用の認証環境を用意し、メールアドレスを暗号化し、最後には銀行情報を取得するAPIまで追加することになりました。
各種APIを使い始めたあたりから、だんだん小さなギャラリーがつくるシステムの規模を超え始めている気もします。
でも、今回の仕組みをつくったことで、作家への精算を効率化するだけでなく、今までメールなどで受け取っていた個人情報の扱い方そのものを見直すことができました。
システム化というと、「何を自動化するか」「何ができるようになるか」に目が向きがちです。でも今回については、何を自分たちのシステムに持たないかを決めたことも、かなり大きな意味があったと思っています。
これで「3.作家に精算する」までつながりました。
最初はWebサイトをリニューアルする話だったはずなんですが。
どこまで行くんでしょうね。
企画・原文:aL
構成・編集協力:ChatGPT
原文:約1,190文字 → 編集後:約2,200文字
- その1「作家から作品情報を集める」
- その2「作品を販売する」